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祈りの幕が下りる時 [ミステリ(日本)]


祈りの幕が下りる時 (講談社文庫)

祈りの幕が下りる時 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫



 ミステリー小説を読んでいて、面白いなと思うポイントはなんだろう?

 一つ目は「謎」。人は謎に惹かれるものだ。謎めいた出来事に遭遇すると、真相はどうなっているのかとつい気になってしまう。ミステリー小説でも、不可解であればあるほど、難問であればあるほど、わくわくするし、結末を知りたくなる。

 二つ目は「ロジック」。謎を単なる勘で解いてしまうのではつまらない。あちこちに隠された手がかりを元に、論理的に結論を導いていくところが見所。些細な手がかりから犯人を絞り込んでいったり、犯人のたくらみを見破ったりするところが面白い。

 三つ目は「トリック(ミスディレクション)」。AがBを殺したという真相があったときに、いかにこの真相から目をそらすかということ。いかにカムフラージュして真相を隠すかという、犯人側の知恵を楽しむということである。うまいものを読むとすっかりミスリードされてしまい、結末で全てがひっくり返ったような感覚になる。

 と、ここまでは普通だが、四つ目が大事だと思うのである。それは「動機」である。犯人がなぜ犯行に及ぶに至ったのかという背景事情。真相に思わぬドラマが待っていたりすると、単なるパズラーではない、より深みを持った作品に感じられるものだ。動機がうまく描かれているミステリーは、文学たりうるんじゃないか。

 犯行の背景や動機の部分を描くのがうまい作家に、東野圭吾がいる。東野圭吾は「謎」「ロジック」「トリック」のどれもうまいが、「動機」のドラマをこんなにうまく書ける作家はなかなかいない。なにしろ、読んでいて泣けてくるのである。犯人が生まれた境遇、育った環境、様々な人間関係がある中で、罪を犯さなければならなくなるというところまで追い詰められる。そのやるせなさに泣けてしまうのである。

 「祈りの幕が下りる時」も泣ける小説である。よく考えると無関係の人まで殺していて、犯人は相当極悪なんじゃないかとは思うし、これで泣くのもどうかとは思う。それでも泣けてくるのは東野圭吾の筆力のなせる技だろう。とにかく「謎」「ロジック」「トリック」「動機」というミステリーの四大要素を全て兼ね備えた傑作だった。
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